2026/05/07交流活動
大阪重粒子線センター研修感想
周 曇 徐州市中心医院 放射線腫瘍科部長
2025年10月から12月までの約3か月間、私は大阪重粒子線センターにて研修する機会を賜り、鈴木 修センター長代理のご指導のもと研鑽を積ませていただきました。3か月にわたる研修を通じて、最先端の重粒子線治療技術ならびにその診療理念に集中的に触れることができ、臨床技術のみならず、 研究的思考および診療体制への理解においても大きな成長を遂げることができました。さらに、現代における高精度ながん放射線治療の発展について、より一層理解を深めることができ、多くの学びと気づきを得た実り豊かな研修となりました。
大阪重粒子線センターは日本の大阪初の重粒子線(炭素線)治療施設として、「市の中心から30分圏内のアクセス」「世界最小クラスのシンクロトロン」「フルポートスキャニング照射」という三つの特長を有し、国際的な粒子線治療分野において確固たる地位を築いています。日立製小型シンクロトロン、6軸ロボット治療台、リアルタイム呼吸追跡システムなどの先端設備を備えるのみならず、診断・治療・フォローアップまでを網羅しています。特に、子宮頸癌・婦人科腫瘍、前立腺癌・泌尿器腫瘍、骨軟部肉腫、膵癌・肝胆道系腫瘍などにおける優れた治療成績は、精密な重粒子線治療が患者にもたらす希望を、身をもって実感することができました。大阪重粒子線センターの外来・日帰り治療モデル、効率的な多職種連携(MDT)体制、厳格な品質管理体制、また、現代的医療機関における患者中心の医療理念と高い専門性を実感するとともに、今後の学習と臨床実践における明確な指標となりました。
研修期間中は、センターにおける臨床、医学物理、品質管理など各部門の業務に没頭し、診療部、医学物理部、技術部といった中核部門をローテーションしながら、重粒子線治療の全プロセスにわたり包括的に参画いたしました。臨床においては、炭素イオン線治療の適応症や線量分割について体系的に学び、新規症例100例以上の評価に参加し、子宮頸癌、前立腺癌、仙骨脊索腫など多様な疾患を含む23例の重粒子線治療計画を独自に作成しました。医学物理分野においては、 日立の治療計画システムの操作を習熟し、標的輪郭描出、ビーム角度の最適化、線量検証など一連の業務を遂行しました。鈴木センター長代理のご指導の下、私が作成した前立腺癌の治療計画では、標的への高精度照射と正常組織保護の両立が達成できました。品質保証分野では10項目以上のQAプロセスに深く関与し、高LETビームの品質管理基準と測定法を習得しました。また、子宮頸癌、脊索腫、再発頭頸部癌の再照射などの中核技術を重点的に研修し、難治性腫瘍に対する先進的治療法と技術的要点を間近に学び、重粒子線治療の技術的精髄についてより実感をもって理解することができました。
なかでも、多職種連携(MDT)体制は、今回の研修における重要な成果の一つです。毎日定例で開催される多職種連携(MDT)体制を通じて、多職種が連携し統合的に診療を行うことの真の意義を実感いたしました。このような協働は、単なる症例検討にとどまるものではなく、患者の診療プロセス全体を貫くシームレスな連携体制であると感じました。放射線科医、医学物理士、診療放射線技師、看護師など多職種がそれぞれの専門性を発揮しながら緊密に連携し、初診時評価から治療計画の策定、治療実施、さらにはフォローアップに至るまで、あらゆる段階において多職種の知見と経験が結集されていました。私は唯一の外国人研修医師として37例のカンファレンスに参加し、多職種のスタッフが患者一人ひとりの具体的な病状に基づき、「治療効果・安全性・生活の質(QOL)」という三つの要素のバランスを実現するため最適な治療戦略を共同で策定する過程を間近で拝見いたしました。このような「意思決定を共に担い、責任も共に負う」多職種連携(MDT)体制を通じて、腫瘍、特に難治性腫瘍の治療においては、医師の力だけでは決して十分ではなく、多職種の高度な融合こそが治療効果の向上と患者の権益の保障につながる重要な鍵であることを強く認識いたしました。
研究能力の向上と研究的思考の形成も、今回の研修におけるもう一つの重要な成果でした。大阪重粒子線センターは、臨床治療において顕著な成果を挙げているだけでなく、研究分野においても国際的な最前線を走っていることを強く実感いたしました。研修期間中、私は自身の研究テーマおよび(中国)国家自然科学基金課題と連動させ、子宮頸癌の放射線抵抗性機序、とりわけLncRNAと放射線感受性の関連に着目し、FA修飾エンジニアリングエクソソーム‐siRNAナノドラッグデリバリーシステムの構築と特性評価を完了いたしました。さらに、本システムと放射線治療との併用による増感効果についても初期的な有効性を確認することができました。また、小照射野プラットフォームにおいて体系的なトレーニングを受け、微小腫瘍標的の高精度な位置決めおよび照射技術を習得いたしました。これにより、今後の生体内実験を円滑に進めるための確固たる基盤を築くことができました。センターの濃厚な研究風土と厳謹な研究姿勢、 そして「臨床課題を起点とする」研究発想に深い感銘を受け、今後の臨床・研究融合の発展方向性をより明確にすることができました。
さらに、研修期間中には鈴木センター長代理をはじめとするセンターのスタッフとも良好な学術交流関係を築くことができました。定期的なカンファレンスや学術交流を通じて、症例や研究について大阪重粒子線センターの医師等と踏み込んだ議論を行い、重粒子線治療技術への理解を一層深めるとともに、将来における国際協力の方向性についても初期的な構想を描くことができました。また、大阪重粒子線センターの医師からは中国での特別講演実施にも前向きなご意向をいただき、今後の学術交流および協力体制構築に向けた重要な架け橋が築かれました。
3か月間の研修を通じて、私は重粒子線治療の全プロセスにわたる技術的核心を習得し、腫瘍治療に対する理念を刷新することができただけでなく、現代のがん治療における「道」と「術」の本質を学ぶ機会となりました。いわゆる「術」とは精緻な治療技術、厳密な品質管理体制、効率的な運営体制であり、「道」とは患者中心の理念、多職種連携を基盤とする診療モデル、そして臨床研究を発展の原動力とする思考体系であると理解いたしました。これらの学びと気づきは、今後の自身の進むべき方向を明確にするとともに、 担うべき責任と使命の重さをあらためて自覚させるものでした。
帰国後は、今回の研修で得た知識と経験を実際の業務に結び付け、先進的な技術・理念・運営モデルの実装に取り組んで参ります。一方では、陽子線・重粒子線治療の標準化されたクリニカルパスの構築および最適化を主導し、患者選定・評価基準の整備、全プロセスにわたる品質管理体制の確立、ならびに治療効果の追跡データベースの構築を進めてまいります。また、より深く統合された多職種連携(MDT)体制の構築を積極的に推進し、固定メンバーによる陽子線・重粒子線治療MDTチームを編成するとともに、リハビリテーションの早期介入を促進し、多職種連携が診療の全過程を貫く体制の確立に努めてまいります。同時に、臨床課題を起点として高水準の臨床研究およびトランスレーショナルリサーチをスタートさせ、華東地域の患者集団を対象とした陽子線・重粒子線治療のリアルワールド研究を展開するとともに、免疫療法・分子標的治療との併用による新たな治療戦略の探索を進め、基礎研究と臨床応用をつなぐ橋渡し体制の構築に取り組んでまいります。さらに、中国国内における陽子線・重粒子線治療の専門チーム育成にも尽力してまいります。シリーズ専門講座やワークショップ、オンライン合同セミナーなどを通じて研修成果を共有し、チーム全体の専門性向上を図るとともに、一般人向けの啓発資料を作成し、患者および社会に対して 陽子線・重粒子線治療技術を正しく分かりやすく伝えることで、専門性に裏付けられた信頼あるブランドの確立に努めてまいります。
今回の訪日研修は、私にとって大変貴重な学習の機会であると同時に、自己研鑽と成長の歩みでもありました。今回の研修を新たな出発点として、学んだこと、考えたこと、そして得た気づきを実務に生かし、専門技術のさらなる向上と診療モデルの革新に努め、当科における陽子線・重粒子線治療技術の発展と進歩を力強く推進してまいります。そして、より多くのがん患者に対し、より精密で、より効率的かつ質の高い 医療サービスを提供できるよう尽力し、病院および本プロジェクトより賜りました貴重な機会に報いてまいる所存です。また、大阪重粒子線センターをはじめとする国際的トップレベルの医療機関との学術交流・協力を継続的に強化し、国際的ながん放射線治療の最前線を常に視野に入れながら、地域における高精度ながん放射線治療の発展に貢献してまいります。
鈴木修センター長代理(左から2人目)を囲んでスタッフの皆さんと歓迎会にて