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2025/12/11交流活動

【訪日研修】泌尿器科医師3カ月研修感想――亀田総合病院

訪日研修感想:亀田総合病院泌尿器科での探求と成長
何 寧
浙江大学医学院附属第一医院 泌尿器科

 亀田総合病院での三か月間の研修を振り返ると、最初は日本語の医療用語に戸惑いながらも、次第に助手の一人として手術サポートに参加し、チームと円滑にコミュニケーションを取れるようになりました。この経験は専門技術の飛躍的な向上に加え、「患者中心の医療」という理念への新たな理解を深める貴重な機会となりました。このような成長ができたのは、泌尿器科部長である安倍弘和先生(図1)の丁寧なご指導なしにはあり得ません。特に、安倍先生が長年にわたり研鑽を積まれてきた女性泌尿器科領域における精緻で低侵襲な手術技術は、今でも鮮明に記憶に残っています。亀田総合病院の手術室の時計や4K腹腔鏡モニターの映像とともに、その光景が今でも鮮明に蘇ります。

1 泌尿器科部長である安倍弘和先生との術中写真

 亀田総合病院は関東地方でも有数の総合病院であり、その泌尿器科は「各分野の高度専門化と患者に寄り添った診療プロセス」で広く知られています。初日に、安倍先生が語られた「泌尿器科は“男性のためだけの科”ではありません。女性泌尿器疾患こそ、繊細な技術と共感の姿勢が求められるのです。」という言葉は、私の女性泌尿器科への探求の扉を開いてくれました。これまで中国での臨床では、女性尿失禁や骨盤臓器脱に対して主に経腟的アプローチを行ってきましたが、今回の研修では、腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)や経腟メッシュ手術(TVM)などの低侵襲手術の理解を深めることができました。安倍先生とともに何度も手術台に立ち――安倍先生は緑色の滅菌手袋を着け、レンズ越しに手術野へ鋭く視線を集中させておられました。その傍らで、私は緊張と期待が入り混じった気持ちでLSC手術に合わせて準備を進めながら、低侵襲手術が患者さんにとってどれほど大きな意味を持つのかを、肌で感じることができました。

 それは、52歳の子宮摘出術後に骨盤臓器脱を呈した患者さんでした。術前評価では腟断端脱がⅢ度に達し、腹圧性尿失禁も併発していました。手術が始まると、手術台横の4K腹腔鏡モニター(図2)には、骨盤内の組織層が鮮明に映し出されました。安倍先生が器具を操作して腹膜を剥離していくと、画面上に血管叢が細かなネットワークのように広がり、先生の一つ一つの操作は血管を的確に避けながら進められていました。メッシュ縫着時も、針の刺入角度や走行は高精細映像下でも全くぶれがなく、その精度の高さに感銘を受けました。さらに安倍先生は、患者の体位の快適性や術後回復への配慮を常に念頭に置き、腹腔鏡のトロッカー(Trocar)穿刺位置を工夫して腹壁筋群への侵襲を最小限に抑えていました。「こうすると、術後翌日には歩き始められ、入院期間も23日短縮できます」と、操作を続けながら丁寧に説明してくださいました。モニターに映るメッシュと仙骨前筋膜との密着度、縫合の張力コントロール――その一つ一つが、女性泌尿器科手術における“精緻さ”をよく示していました。術後の回診では、患者さんが安倍先生の手を握りながら、「こんなに大きな手術なのに、目が覚めたら全然痛くなくて驚きました」と感謝を述べました。その瞬間、私はふと気づきました。本当に卓越した技術とは、単に“病気を治すこと”だけではなく、“患者さんができる限り苦しまずに回復できるようにすること”なのだと。

2 LSC術中写真

 LSC手術が安倍先生の全体的なマネジメント力を示すものであるとすれば、TVM手術は「低侵襲理念の究極の体現」だと感じました。ある48歳の腹圧性尿失禁患者が頻繁な尿漏れのため外出や人付き合いを控え、不安感も生じていました。安倍先生は術前評価で、患者さんの尿漏れの頻度や生活上の困りごとを詳しく聞くだけでなく、更にリハビリスタッフも交えて、「手術+術後骨盤底筋トレーニング」という個別の計画を立ててくれました。手術当日、操作はわずか30分で完了しました。陰道前壁の小切開からメッシュの挿入、張力調整、固定縫合まで、すべてが簡潔で効率的でありながら、細部にまで配慮が行き届いていました。「TVM手術のポイントは“速さ”ではなく“正確さ”です」、「メッシュの位置が1ミリでもずれると、術後の結果に影響し、排尿障害を招くことさえあります」と、安倍先生は手術後に私に教えてくれました。1週間後、患者さんは笑顔で「これでようやく友人と普通に買い物に行けます」と話してくれました。この場面を目の当たりにし、私は女性泌尿器科手術が単に身体の病気を治すだけでなく、患者さんの生活への自信も取り戻す医療であると改めて深く実感しました。

3 腎部分切除術中写真

 女性泌尿器科という特色ある分野に加え、安倍先生のご配慮により、泌尿器科腫瘍や結石などの一般的疾患についても、体系的に標準化された診療プロセスを学ぶことができました。図3に示されている腹腔鏡画面は、腎部分切除術の操作過程を記録したものです。画面上では腎周囲脂肪と筋膜の分離界面が非常に明瞭に確認でき、安倍先生のチームによる「神経血管束の温存」を意識した操作を通して、私は「腫瘍根治と機能温存のバランス」という理念を直感的に理解することができました。特に印象に残っているのは、72歳の局所進行前立腺癌の患者さんです。画像診断では腫瘍が精嚢に浸潤していましたが、安倍先生のチームはすぐに根治手術を行うのではなく、まず3か月間の新補助内分泌療法を行い、腫瘍が縮小してから腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術を実施しました。術後、患者さんの尿失禁は良好に回復し、PSA(前立腺特異抗原)は0.01ng/ml以下まで低下しました。このように「手術を急がず、患者さんにとって最良の予後をまず考える」という診療方針を間近で学び、腫瘍治療における「全体性」の重要性をより深く理解することができました。

 泌尿器結石の診療分野においても、亀田総合病院の「低侵襲・精密化」という取り組みは大いに参考になりました。ここでは、軟性尿管鏡による砕石術が「日帰り手術」として定着しており、多くの患者さんが手術翌日には退院可能です。私は複雑なサンゴ状結石の手術に参加する機会がありました。患者さんの結石は直径4.5cmに達し、さらに水腎症を合併していました。安倍先生のチームは「軟性尿管鏡と経皮的腎鏡の併用技術」を用い、まず経皮的腎鏡で大部分の結石を除去し、その後軟性尿管鏡で下腎杯の残存した小結石を処理しました。手術全体の所要時間はわずか2時間で、術後再検査のKUB(腹部単純X線)では結石除去率100%が確認されました(図4)。手術中、安倍先生は繰り返し「腎機能保護が最優先です」と強調しました。灌流液の圧力調整や手術時間の管理を通して、腎実質への損傷を最小限に抑えていました。このような「臓器保護を最重要とする」手術方針は、私の今後の臨床実践においても重要な指針となっています。

4 尿路結石手術

 三か月間の研修を通して、技術面での学びも大きかったのですが、それ以上に私の心に残ったのは、亀田総合病院チームの「協働の精神」と「患者さんへの細かな配慮」です。手術室の壁面に掲示された操作ガイドの表示や、器械台の規則正しい配置など、ここでは「手順の整備と人に優しい配慮」が両立した医療環境が実践されていました。

 帰国の際、安倍先生からご自身が執筆された『新・女性泌尿器科テキスト』(図5)を贈っていただき、扉ページには「医学に終わりはなく、共感こそ原点である」と書かれていました。この言葉は、今回の研修を通じて私が最も深く心に刻んだ学びです。手術室での場面や4Kモニター上の操作の細部は、単なる研修記録にとどまらず、私の今後の臨床実践における学びの“手本”となっています。

5 新女性泌尿器外科テキスト

 帰国後は、亀田総合病院で学んだLSCTVMなどの技術を、少しずつ臨床に応用していくとともに、同院の人間性に基づく配慮の理念も参考にし、中国国内の女性泌尿器科患者さんにより質の高い診療を提供していきたいと考えています。今回の日本での研修経験は、決して終着点ではなく、私が泌尿器科医として探求を続け、成長し続けるための新たな出発点であると実感しています。今後は、この学びと気づきを胸に、患者さんの健康を守る道のりを歩み続けていきたいと思います。

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