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2026/03/27交流活動

腫瘍科医師3ヶ月研修所感:国立がん研究センター中央病院

範 遥
河北医科大学第一医院 腫瘍科

 2025年10月から12月にかけての3か月間、私は国立がん研究センター中央病院にて研修の機会をいただきました。研修当初は、日本と中国における医療体制の違いに驚くこともありましたが、次第に現場に溶け込み、指導医の先生方と活発に議論できるようになりました。三つの異なる診療科での研修経験は、私の専門的視野を大きく広げるとともに、「精密医療」への理解をより一層深める貴重な機会となりました。

 日本を代表するがん診療・研究機関である同センターにおいて、確立された多職種・多診療科連携の体制、完成度を徹底的に高めるための技術的探究、そしてあらゆる場面において一貫して実践されている患者に寄り添う姿勢は、私の今後の医師人生において大きな財産になりました。これらの学びは、研修を受け入れたいただいたそれぞれの診療科の先生方の丁寧なご指導と惜しみないご共有なくしては得られなかったものです。

 最初に研修したのは腫瘍内科で、主に乳がん、婦人科がん、泌尿器系腫瘍、肉腫などを対象としていました。毎朝の申し送りの時間を通して、通常症例から難治症例に至るまで、患者一人ひとりの治療方針について活発な議論が行われ、検査結果や食事・睡眠状況に至るまで細やかに確認されていました。回診時には、すべての患者に対して丁寧な声かけが行われ、患者に寄り添う姿勢が自然に実践されていることを強く感じました。外来診療では、医師がすべて検査結果の変化について分かりやすく説明し、複数の治療選択肢を提示するとともに、適応のある患者には臨床試験についても丁寧に説明していました。そこには、医師と患者の間に築かれた深い尊重と信頼関係がありました。また、各外科との定期的な多診療科カンファレンスを通じて、患者一人ひとりに最適化された治療方針が検討されており、「精密医療」の実践を間近で学ぶことができました。さらに、毎週水曜日の朝に行われる文献抄読会では、最新の知見に触れ、議論の中から新たな発想が生まれる刺激的な時間を経験しました。

腫瘍内科での研修

 次に研修した乳腺外科では、数十例に及ぶ乳がん根治手術を見学しました。乳房温存手術、センチネルリンパ節生検、乳房再建術に至るまで、いずれの手術にも「根治性と整容性の両立」を重視する治療理念が貫かれていました。特に、乳がん根治手術後の乳房再建では、乳腺外科医と形成外科医が協働して手術を行い、各工程が的確かつ丁寧に進められていました。これらの経験を通じて、外科医の役割は病変を切除することにとどまらず、患者の生活の質や将来への希望を守ることにあるのだと、改めて深く実感しました。

乳腺外科での研修

 三つ目の研修科は放射線治療科でした。ここでは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の臨床試験をはじめ、VMATSBRT、近接照射など多様な治療法が実践されており、患者の病期や状態に応じた「精密放射線治療」が行われていました。早期がんに対する根治治療から、進行期患者に対する症状緩和を目的とした緩和医療まで、それぞれに最適な治療計画がオーダーメイドで立案されている点が非常に印象的でした。ここでは、医師が患者に対して放射線治療の流れや注意点を丁寧に説明する姿、標的輪郭の作成や治療計画の確認における細やかさ、さらに近接照射における正確無比な手技を間近で学ぶことができました。また、治療後の長期フォローアップも徹底されており、外来で放射線治療後13年を経ても定期通院されている患者を拝見した際には、毎年の診察が医師と患者双方にとっての「安心」につながっていることを実感しました。

放射線治療科での研修

 三か月間の研修はあっという間でしたが、そこで得た臨床知識と人文的な学びは、私にとって計り知れない価値を持つものです。帰国後は、国立がん研究センターで学んだ精密診療の考え方や多診療科連携のモデルを日常診療に活かすとともに、患者に寄り添う姿勢を診療のあらゆる場面に取り入れ、中国国内のがん患者に対して、より質が高く、温かみのある医療を提供していきたいと考えています。

 

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